講演2「高脂血症と水泳運動」

山之内 国男氏
山之内糖尿病予防研究所
クリニカルデスク

┃水中運動は肥満者に適した運動

 日本では、年々肥満人口が増加しています。特に男性の場合すべての年代で肥満の増加が認められます。
 また最近の国民栄養調査によると女性に比し30〜40代の男性は高脂血症、高血圧が2倍近く多いという報告もあります。
 この原因は脂肪摂取量の増加と運動不足が考えられます。運動不足で助長される内臓脂肪型肥満はインスリン抵抗性という病態を引き起こし、高脂血症、高血圧、糖尿病など生活習慣病の発症原因となるので治療の対象となります。
 BMI25以上で臍周囲径が男性85cm以上、女性90cm以上の場合、内臓脂肪型肥満を強く疑います(日本肥満学会の基準)。
 効果的な治療は食事と運動の併用が大切です。運動併用により消費エネルギーを増やすだけでなく、食事単独による筋組織の減少を防ぎ、基礎代謝の低下を防止するからです。
 運動の種類として代謝を円滑にし持久力を向上させインスリン抵抗性を改善させる有酸素運動と筋力筋量を増大させ基礎代謝を高めるレジスタンス運動を組み合わせて実施することが推奨されます。レジスタンス運動とは重りや抵抗負荷に対して動作を行う運動をいいます。
 水中運動はこの両者を兼ね備えた運動であり、高齢者にも転倒の危険がないこと、また、肥満者には膝、下肢関節に負担がかからなくて、歩行のむきやリズムを変えることにより種々の抵抗が得られ、かつ飽きないすぐれた運動といえるでしょう。内臓脂肪の減少は高脂血症だけでなく上述した全ての肥満インスリン抵抗性に関連した病態を改善します。
 しかしながら運動療法は継続が難しく、運動記録表、集団指導、家族での参加、レクリエーション導入、運動施設の利用など種々の工夫が大切です。

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