インフォメーション

社団法人 日本スイミングクラブ協会

新型インフルエンザ情報

2009/6/1修正

新型インフルエンザ国内感染の推移

 5月9日、カナダから米国経由で成田国際空港に帰国した、大阪府立高校の生徒2人と教員1人の感染が確認された「新型インフルエンザ」は、5月16日、神戸市で渡航歴のない高校生から国内感染が確認されました。
 政府はこれまで、「新型インフルエンザ対策行動計画」に基づき、ウイルスの国内侵入を阻止することを目的とした「第一段階」の対応を取ってきましたが、5月16日に国内発生早期である行動計画の「第二段階」に引き上げました。
行動計画の「第二段階」の措置とは、対策本部「専門家諮問委員会」の意見をもとに、
(1)外出の際のマスク着用の徹底
(2)不要不急の外出自粛
(3)時差出勤や自転車・徒歩などによる通勤
(4)集会やスポーツ大会などの開催自粛
(5)学校・保育施設の臨時休業
(6)事業者に対する不要不急の事業縮小
などを要請するものです。

 兵庫県はこの国内感染に伴い、神戸市・芦屋市の公立幼稚園、保育園、小・中・高等学校の一部に休校措置をとり、私学についても休校の要請を行いました。更にその後、大阪府においても5月17日(日)に休校措置を決定し、兵庫県では5月22日(金)まで、大阪府では5月24日(日)の1週間を、両県のほぼ全域において、休校措置がとられました。一時期には全国各地への飛び火も懸念されましたが、異例の休校措置も週明けには解除され、危惧された休校措置の延長も無事回避することができました。
 その後、滋賀県及び関東地域において、単発的に国内発生が確認されるものの、全体としては徐々に鎮静化に向かっているようです。

休校措置地域での各施設の対応の実際

(1) 兵庫県・大阪府の休校措置を受け、近畿支部では休校地域の加盟クラブに対し、情報の提供と施設の休業を呼びかけました。
また、予定している競技会・講習会等の中止又は延期を決めました。
(2) 当該呼びかけは、情報提供の一環であり強制力を伴うものではありません。
事業活動の自粛は、あくまでも経営者の高度な経営判断であり、個別の事情に応じた対応が必要です。
(3) 各自治体の休校の指示・要請が、当面、1週間でしたので、大半のクラブがジュニアのクラスのみ、1週間の休業を実施し、成人については事業を継続いたしました。
(4) 大半のクラブでは、休業部分を後日振替措置で対応いたしました。
発生状況次第では、休校が延長される可能性がありました。幸い、1週間で終了いたしましたが、延長の場合に事業を再開するか、休業を続けるかは、会費・参加費の返還等の問題も生ずる可能性もあり、各クラブとも未定のまま休業に踏み切ったようです。
(5) 問題点として、各都道府県では1週間の休校の授業の遅れを、夏休みの短縮で取り戻すことを考えており、今後、夏休みの短期スクールの日程に影響が出る可能性があります。

 学校の休校は感染拡大を防止することを目的とするため、学校サイドは、休校期間中、塾・スポーツクラブを含め生徒の外出の自粛を強く指導し、関係施設の生徒の参加率も激減することが想定されます。自施設の休業の検討は、「近隣の学校・保育施設の休校」及び「自治体からの事業縮小の要請」の有無が、重要な判断基準となります。
 梅雨の時期を迎えることもあり、現状では終息傾向にあると考えられているようですが、今年の冬場の再流行が懸念されています。今回の関西での休校措置に対する事業活動の自粛は、今後の各クラブの対応策として大いに参考になるものと思われます。

国の新型インフルエンザ対応策の「基本的対処方針」

 政府の「新型インフルエンザ対策行動計画」は、本来、「トリインフルエンザ」に対応して以前より策定されていたものですが、今回の「新型インフルエンザウイルス」については、専門家からは「弱毒性」との見方も出ていることから、当該行動計画を弾力的に運用する見通しも出てきました。
政府の「新型インフルエンザ対策本部」では、5月22日に「基本的対処方針」を次のとおり決定しました。
今回の新型インフルエンザは、
(1)感染力は強いが、多くの感染者は軽症のまま回復しており、
(2)抗インフルエンザウイルス薬の治療が有効であるなど、
季節性インフルエンザと類似する点が多いことから、今回のウイルスの特徴を踏まえると、
(1)国民生活や経済への影響を最小限に抑えつつ、感染拡大を防ぐとともに、
(2)基礎疾患を有する者等を守るという目標を掲げ、
対策を講じることが適当であるとの考え方を示しました。
 このため、今後も現行の行動計画をそのまま適用するのではなく、この基本的対処方針により、地域の実情に応じた柔軟な対応を行っていく必要があるとし、事業者に対しては、事業自粛の要請を行わないことや、休校措置は地域ごとに対策が取れるなど新指針を決定しました。

新型インフルエンザ対策行動計画

 ここで、強毒性インフルを想定した、従来の「新型インフルエンザ対策行動計画」について触れておきます。政府は、新型インフルエンザを次の段階に分類して、それぞれの対策を立てております。

我が国における発生段階の区分

発生段階 状 態
前段階(未発生期) 新型インフルエンザが発生していない状態
第一段階(海外発生期) 海外で新型インフルエンザが発生した状態
第二段階(国内発生早期) 国内で新型インフルエンザが発生した状態
第三段階 国内で、患者の接触歴が疫学調査で追えなくなった事例が生じた状態
各都道府県
の判断
感染拡大期 各都道府県において、入院措置等による感染拡大防止効果が
期待される状態
まん延期 各都道府県において、入院措置等による感染拡大防止効果が
十分に得られなくなった状態
回復期 各都道府県において、ピークを越えたと判断できる状態
第四段階(小康期) 患者の発生が減少し、低い水準でとどまっている状態
前記、第二段階(国内発生早期)における「(6)事業者に対する不要不急の事業縮小」には、自粛が要請される事業者について、

感染拡大防止の観点からは、不要不急の事業については、可能な限り縮小・休止することが望ましい。中でも、不特定多数の者が集まる場や機会を提供している事業者については、感染拡大防止の観点から国や地方自治体が事業活動の自粛を要請することになる。

とあり、自粛が要請される可能性のある事業者の例として、

*不特定多数の集まる施設:集客施設、興行施設等(集会施設、美術館、博物館、動物園、図書館、映画館、劇場、スポーツ施設、遊園地等)

に見るように「スポーツ施設」も含まれています。
事業活動自粛の要請があった場合、自施設としてどう対応するかの判断が求められます。
 我々の業界にとって、「(5)学校・保育施設の臨時休業」及び「(6)事業者に対する不要不急の事業縮小の要請」の有無が、自施設の事業活動自粛についての判断基準であると思われます。

事業継続計画の策定

 万一、強毒性の新型インフルエンザが発生した場合、政府は直ちに、従来の「新型インフルエンザ対策行動計画」に基づき、それぞれの対策を実行に移します。
 その際の、各事業所で実施すべき対策が、厚生労働省のホームページの「ガイドライン」に掲載されていますので、是非、各クラブでご確認をお願いします。
 それでは上記ガイドラインに基づき、スポーツクラブが行う対策として何が考えられるでしょうか。
スイミング・スポーツクラブがサービス業である以上、利用者に館内で快適にお過ごし頂きたいものです。利用者へ必要不可欠な協力を依頼することは当然のことですが、過度な規制や要請は避けなければなりません。仮に、自施設地域で感染が確認されていない時点で、フロントスタッフ全員がマスクを着用して接客した場合、不快を感じる利用者と、時期を得た対応と評価される方がおられると思います。フロント・事務スタッフの施設内でのマスクの常用は、感染防止上、非常に有効な対策ですが、新型インフルエンザの感染度合いが現在どのステージにあるかというタイミングと、利用者への告知方法が大きなポイントとなります。
 また、現在、クラブで予定している国内・国外ツアーや各種イベントの中止を含めた再検討、選手・マスターズスイマーの競技会出場等、実施する場合の留意点・対応策等を、事前に検討しておく必要があります。更には、事業活動の自粛を要請され営業を休止する場合には、会員への緊急連絡方法の検討や、会費・参加費の返還等の問題も生じてきます。

政府の「新型インフルエンザ対策行動計画」には

国や地方自治体は国民に対して外出自粛を要請したり、不特定多数の者が集まる場や機会には行かないよう広報することから、事業者が自粛するかどうかに関わらず利用客等の大幅な減少が予測される。これら事業者においては、自粛要請や利用客等の減少を前提として事業継続方針を立案しておく必要がある。

とあり、クラブ側の運営の自粛の有無に関わらず、国や地方自治体から外出自粛要請が出た場合、利用者の大幅な減少を予測しており、「事業継続をどの程度行うかについての決定は、従業員や訪問者、利用客等の感染防止策の実施を前提として、事業者自らの経営判断として行われる。」としております。
 企業として、自社の経営と、その社会的役割を果たすため、「何時、どのタイミングで、何を実施するのか」、各施設の事情に応じたそれぞれの「事業継続計画」が必要となります。
「事業継続計画」の策定については、厚生労働省のホームページから「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」をダウンロードしてください。

 厚生労働省のHPトップ(http://www.mhlw.go.jp/)に、「新型インフルエンザに関する情報」のサイトがあります。
その中の右のバーから「新型インフルエンザ対策ガイドライン」をクリックすると、「新型インフルエンザ対策ガイドラインPDF全体版」を取得することができます。
その全体版の、89〜126Pが「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」に当たります。
当該ガイドラインに沿って、各クラブで事業継続計画の策定をお願いします。

情報の収集

的確な経営判断のためには、正確で最新の情報を継続して入手できる体制を構築することが必要です。
国内外の新型インフルエンザの発生状況や、公共サービスに関する情報を、国、地方自治体、WHO等から入手することができますが、下記情報源については定期的なチェックをお勧めします。
○厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/
○国立感染症研究所 感染症情報センター(http://idsc.nih.go.jp/index-j.html