●ダイエットは「生き方」の問題

 エネルギー消費を上回るエネルギー摂取を長期間続けた場合、過剰エネルギーが体脂肪として過剰蓄積されて肥満が発生します。肥満の予防改善には、エネルギー摂取量と消費量のバランスをとることが必要ですが、「食べる歓び」は人生における大きな歓びの一つであり、これを制限するダイエットは長続きしません。ダイエットとは生涯にわたる「生き方」の問題なのです。
 ではどうすればよいのか。――食べたいものを食べても太らない、寝ていても痩せる、「エネルギー消費量の多い身体」を作ればよいのです。

 ●軽レジスタンス運動をプラスして基礎代謝能力を上げる

 エネルギー消費は、安静代謝、活動代謝、食事誘発性体熱産生の3つの代謝で占められており、安静代謝の約80%を占める基礎代謝が、全体の50%を占める最大の消費項目です。
 基礎代謝は、筋肉の有酸素エネルギー代謝能力を強く反映します。また筋肉は、全身が分解する脂肪、グルコースのそれぞれ70〜80%をエネルギー源として分解する組織です。
 つまり基礎代謝能力の高い身体づくりのためには、有酸素エネルギー代謝が中心的に働く赤筋(遅筋)の量を増やせばよいのです。
 この赤筋を増やすために効果的なのが、300g〜2kg程度の軽量負荷(ダンベル)を用いるダンベル体操に代表される「軽レジスタンス運動」です。運動中のエネルギー消費量は多くはありませんが、筋肉を増量し、筋肉の有酸素エネルギー代謝能力を増大させることによって基礎代謝能力を高めるため、24時間にわたるエネルギー消費を大きくすることができます。
 アクアエクササイズも、水の抵抗を利用した筋肉作り運動として、軽レジスタンス運動と同じ効果を持っています。しかし水中の運動だけでは負荷が足りない、水流の影響で筋肉の伸縮をきっちり行うことが難しいなどの理由から、陸上での軽レジスタンス運動を組み合わせて行うことをお薦めします。ウォーミングアップとして、あるいはアクアエクササイズ終了後の締めとして、ダンベル体操を取り入れてみてはいかがでしょうか。

●特別講義「スポーツと栄養」 鈴木 正成氏
 運動後30分以内に蛋白質+糖質を摂取せよ

 運動によって筋肉繊維が切れたり、細胞膜が破れてミオグロビンが漏れ出すと、酸素の貯蔵能力の悪い筋肉になってしまいます。こうした筋肉ダメージを短時間で修復するためには、蛋白質合成を促進して、失った分の蛋白質を補充することが重要になります。
 そのためには、筋肉蛋白質を含めたすべての蛋白質の分解・合成が一番盛んになっている運動直後(運動後30分以内)に、蛋白質と、インシュリン分泌を刺激する炭水化物(糖質)を摂取しなければなりません。
 蛋白質合成を促進させるためのもう一つのポイントは、筋力トレーニングをして運動を締めくくること。筋力トレーニングによって成長ホルモンが分泌され、蛋白質合成が活性化されます。さらにこの成長ホルモンの恩恵を受けるためには、トレーニング後に動き回らず、休息状態にある必要があります。
つまり壊れた筋肉組織の修理・補充にとって理想的なのは、運動の最後に筋力トレーニングを行い、運動後30分以内に蛋白質と炭水化物(糖質)を摂取し、食後は動かずに休息することです。

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