循環器系疾患予防改善のためのアクアフィットネスの指導手順と注意点〜目黒伸良氏〜

 血圧は、年齢と共に上がっていきます。20代男子の平均は123/73、女性は116/70。それが60代になりますと、男性は148/88、女性は148/85。日本高血圧学会のガイドラインによれば、140〜159/90〜99から「高血圧(軽症)」と分類されています。60代の平均血圧がすでに高血圧なのですから、「平均だ」などと喜んではいられません。
 高血圧を放置すると、血管が次第に厚くなると同時に壁が硬くなって動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞、腎不全などを起こしやすくなります。また、心臓の負担が増加して、心肥大から心不全になる危険性も高くなるのです。
 こうした高血圧を始めとする循環器系疾患の予防改善のための水中運動としては、有酸素運動が中心となります。
 しかし、ある程度の運動を続けて体力もつき、血圧改善効果も確認され正常血圧にもどったら、有酸素運動の後に低負荷の筋力トレーニングを加えたほうがよいでしょう。糖尿病予防改善のための水中運動でも中高年者の場合、有酸素運動だけでは血糖値が下がらず、ある程度の筋力トレーニングを加えたほうが効果的であるとのデータがあります。筋肉に適度の刺激を与えて鍛えることで、日常生活におけるエネルギー消費量を増やすことにもつながってくるのです。ただしアイソメトリック運動は、血圧を上げてしまうので避けてください。
 運動療法の効果は開始から5〜7週間で現れると言われていますので、週3回、少なくとも2ヶ月は継続して行なう必要があります。また運動を1ヶ月以上休んだ場合は血圧値が元に戻っていると考えて、前回の続きを行なうのではなく、運動内容を変更して実施するよう指導してください。
 高血圧でも、降圧剤の服用で安定した血圧コントロールができているならば、薬と合わせて適度な運動療法も上手に活用したほうがよいと言われています。中高齢者では複数の降圧剤を服用しているケースも少なくないので、降圧剤に関する知識は不可欠です。


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